今からでも得しよう!キャリアアップ助成金とは?

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者(パートタイム・有期契約・派遣など)の企業内でのキャリアアップを促進することを目的とした、厚生労働省が実施している制度です。企業が非正規雇用労働者に対して正社員化や処遇改善、スキルアップを行った場合、その取り組みにかかる費用の一部を助成金として支援するものです。

少子高齢化が進み、労働力人口が減少する中で、多様な働き方を支援しながら安定的な雇用環境を整備することは企業にとっても重要な課題です。この制度は、非正規雇用から正規雇用への転換や処遇の改善を通じて、労働者のモチベーション向上や定着率の向上を図るとともに、企業の生産性向上にもつながる支援策として位置づけられています。


キャリアアップ助成金の目的

キャリアアップ助成金の主な目的は以下の3点に集約されます。

  1. 雇用の安定化:正社員化を促進し、非正規雇用者の不安定な労働環境を改善します。
  2. 労働者のスキル向上:訓練や研修によって、非正規雇用者の能力向上を図ります。
  3. 企業の生産性向上:人材の定着やモチベーションの向上によって、企業の生産性向上を支援します。

キャリアアップ助成金の主なコース

2025年度(令和7年度)現在、キャリアアップ助成金は複数のコースに分かれており、それぞれ対象となる取り組みと支給額が異なります。以下に主なコースを紹介します。

1. 正社員化コース

非正規雇用労働者を正社員へ転換、または新たに正社員として雇い入れた場合に支給されます。

  • 支給額:
    • 有期雇用→正社員:1人あたり57万円(生産性要件を満たすと72万円)
    • 無期雇用→正社員:1人あたり28.5万円(生産性要件を満たすと36万円)

2. 賃金規定等改定コース

非正規労働者の基本給を引き上げ、賃金規定を整備した場合に支給されます。

  • 支給額:
    • 対象労働者1人あたり9,500円(賃金引上げ人数により支給上限あり)

3. 賃金規定等共通化コース

正社員と共通の賃金規定を適用し、非正規労働者にも適用した場合に支給されます。

  • 支給額:1事業所あたり19万円(生産性要件満たすと24万円)

4. 諸手当制度共通化コース

通勤手当や賞与など、正社員と同様の手当制度を非正規労働者にも適用した場合に支給されます。

  • 支給額:1制度あたり38,000円、最大2制度(計76,000円)

5. 選択的適用拡大導入時処遇改善コース

短時間労働者に対する社会保険の適用拡大を実施し、その処遇改善を行った場合に支給されます。

  • 支給額:対象労働者1人あたり38,000円

6. 長時間労働者の処遇改善コース

長時間働いている非正規労働者の処遇を改善する取り組みに支給されます。

  • 支給額:内容により異なる(詳細は制度説明資料参照)

申請の流れ

キャリアアップ助成金を活用するには、以下のような流れで申請を行います。

  1. キャリアアップ計画書の提出:事前に管轄の労働局に提出し、認定を受けます。
  2. 対象となる取り組みの実施:例えば、非正規から正社員化など。
  3. 支給申請の提出:取り組み後、一定期間経過後に支給申請書を提出します。
  4. 審査・支給決定:労働局が内容を審査し、適正であれば助成金が支給されます。

申請書類には、労働条件通知書、就業規則、雇用契約書、賃金台帳などが必要です。正確な書類の整備と期限内の手続きが重要です。


対象となる事業主の条件

キャリアアップ助成金を申請するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 雇用保険適用事業所であること
  • 対象となる非正規労働者が6ヶ月以上継続して雇用されていること(正社員化コースの場合)
  • 社会保険料・税金の未納がないこと
  • 過去に不正受給がないこと
  • キャリアアップ計画書を提出済みであること

生産性要件とは?

助成金額の加算を受けるためには、「生産性要件」を満たす必要があります。これは、過去と比較して企業の生産性(売上総利益+人件費+減価償却費)を示す指標が一定割合以上向上していることを示すものです。

生産性要件を満たすことで、助成額が20~25%程度増額されるため、活用できる場合は積極的に検討することが推奨されます。


よくある質問

Q1. 家族や親族が雇用された場合でも対象になりますか?

A. 原則として、同居の親族は対象外となります。ただし、一定の条件を満たす場合は対象となることもあります。

Q2. 社労士に依頼しないと申請できませんか?

A. 自社でも申請は可能ですが、書類の整備や手続きが煩雑なため、専門家に依頼することでスムーズに進むことが多いです。

Q3. 短期のアルバイトは対象になりますか?

A. 原則として、6ヶ月以上継続して雇用されていることが必要です。短期雇用は対象外となる可能性が高いです。

Q4. 助成金はいつ振り込まれますか?

A. 支給申請後、審査を経ておおむね3ヶ月程度で指定口座に振り込まれます。


キャリアアップ助成金活用のポイント

  • 計画的な活用:キャリアアップ計画書の提出が必須です。取り組み前に計画を立てておくことが重要です。
  • 制度変更への対応:年度ごとに制度内容が変更されることがあるため、最新の情報をチェックしましょう。
  • 継続的な雇用と教育:助成金は単なる資金援助ではなく、人材育成と企業成長のための投資です。

まとめ

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の処遇改善や正社員化を通じて、企業と労働者の双方にメリットをもたらす制度です。人材不足が深刻化する中、安定した雇用環境を整備することは企業経営の基盤ともいえます。

助成金制度を上手に活用することで、人材の定着と戦力化を図ることができ、企業全体の競争力向上にもつながります。まずは自社の雇用状況を見直し、活用可能な助成金を調査・計画してみることをおすすめします。